昨年9月、小野寺氏は「従来型携帯に固執した面がある」との反省の弁とともに、田中孝司専務を社長に昇格させる人事を発表した
昨年12月に就任した田中氏はこの反省を踏まえ、スマートフォンへの対応を強化した
「1年半以上にわたりアップルと粘り強く交渉した」(KDDI関係者)という
KDDIが払う代償
実際KDDIはiPhoneを迎えるに当たって相当気を使ったようだ
「つながらないスマートフォンなんて意味ないですよね」
KDDIは今年1月から人気グループの「嵐」を使い、ソフトバンクのiPhoneを暗示するネガティブキャンペーンを開始した
ソフトバンクより通信回線の容量に余裕のあることを強調し、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を採用したauスマートフォンの拡販を狙ったのだ
だが、9月8日の人事異動でこのネガティブキャンペーンを担当したマーケティング本部長が突然子会社に転出させられた
KDDI関係者は「iPhoneを迎えるために、示しをつけたのではないか」と話す
キラー端末であるiPhoneを獲得したことでKDDIが払う代償も大きそうだ
アップルはiPhoneを供給する通信会社に高いノルマを要求することで有名だ
その内容は明らかになっていないが、「ノルマには販売台数と通信料金の2つがある」(同アナリスト)という
まず台数は、通信会社の年間出荷台数の2割とも言われる
KDDIに置き換えれば年間200万台から300万台を確保する必要がある
次に通信料金だ
ソフトバンクの携帯電話向けパケット定額料金は月額5460円だが、iPhone向けだけは同4410円
iPhoneの販売を促すために、ほかのスマートフォンより安い料金をあえて設定しているのだ
KDDIも同様の条件を突きつけられているとすれば、現在のスマートフォン向け月額5985円より1000円近く安い「iPhone特別料金」を作らなければならなくなる
特別料金は、携帯電話会社の収入を目減りさせるだけなく、ほかの端末と差別化することでアップル以外のメーカーの離反を招く恐れがあるのだ
iPhone獲得は金星に違いないが、やり方を間違えると逆効果になる可能性もある
KDDI、「iPhone5」参入の衝撃:日経ビジネスオンライン