フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)
トーマス・フリードマン(2006)

□「オープンソーシングとは、要するにピアレビュー(科学者同士の相互技術評価)による科学なんだ」(マーク・アンドリーセン)

□在庫を情報に換えること

□仕入れ引き延ばし・・・ぎりぎりの瞬間まで製品に付加価値を加えるのを引き延ばす・・・デルは、客がいないのにコンピュータを製造するということをしない

□世界の知識のすべてを・・・誰でも、いつ、どこでも手に入れられるという概念ほどフラット化の大きな要因はほかにはない

□「コンピュータが使えないか、使う機会がなければ、グーグルは使えない。でもそれさえあれば、文字を打ち込むだけで誰でも使える、というところまで差別をなくした」(エリック・シュミット)

□インフォーミングは、アップローディング、アウトソーシング、インソーシング、サプライチェーン、オフショアリングの個人版といえる。インフォーミングは、個人に・・・情報、知識、エンターテインメントのサプライチェーンを創りあげて展開する能力をあたえる。インフォーミングは自分との共同作業でもある

□インフォーミングは友人、仲間、共同作業者を探すことでもある。国や文化の境界を越えたグローバルなコミュニティの形成を促進する

□「グーグルがある世界では、評判がつねについてきて、自分が立ち寄るところに先回りする。評判が自分に先行する。・・・『つねに真実を語りなさい』とマーク・トウェインはいった。『そうすれば、自分のいったことを思い出そうとする必要もない』」(ドブ・シードマン)

□第一の集束

□「互いを補うという性質の品物がある・・・紙があれば鉛筆が役立つのと同じだ。一方が増えれば、もう一方も増え、一方の質が高まれば、もう一方の質も高まり、生産性が上がる。互いを補う品物の同時改善の原則として知られる」(ポール・ローマー)

□富と権力は、三つの基本的な物事を押さえている国、企業、個人のもとで自然に生じるようになる。・・・フラットな世界のプラットホームに接続するインフラ、このプラットホームを徹底的に活用するイノベーションを推進するような教育、そしてこのプラットホームの利点を最大に引き出しつつ欠点を最小限に抑えるような統治体制

□多様な形態の共同作業

□共同作業インターフェイス

□第二の集束

□瞬時に接続する水平な新サプライチェーン・マネジメント

□水平化

□10のフラット化要因の集束は、フラット化した世界を最大限に利用するビジネス手法とスキルを組み合わせた集束を生み出す。そしてその二つが互いを強化する

□指揮・統制ではなく水平の接続と共同作業が重要

□「クライアントのためにバリューを創出するようなソリューションは、一企業どころか、従来の企業統合内にも存在しない。差別化した特性のものでなければならないからだ。そこでわれわれはグループ全体を見渡し、特定のクライアントに最適のメディア担当、最適のブランド戦略担当、最適の広告担当の人間のを拾い集める」(アレン・アダムソン)

□第三の集束

□開放

□フリー・マーケットゲーム

□世界が、付加価値を生み出すための垂直な-指揮・統制(コマンド&コントロール)-システムから、バリューが自然と生まれる水平な-接続・共同作業(コネクト&コラボレート)-システムのモデルに移行

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フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)
トーマス・フリードマン(2006)

□「グローバリゼーションは産業のグローバル化から個人のグローバル化に移った」(ビベク・ポール)

□無敵の民とは、「自分の仕事が、アウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」を意味する

□フラットな世界には「代替可能な仕事と代替不可能な仕事の二つしかない」(ナンダン・ニレカニ)

□アウトソーシングされにくいのは、どんな仕事なのだろう?
…第一は、「かけがえのない、もしくは特化した」人々だ
…第二は、「地元に密着」して、「錨を下ろしている」人々だ

□「一緒に成長しないと、ばらばらになってしまう」(ジーン・スパーリング)

□新ミドルクラスでは、誰もが臨時雇いなのだ

□「〔デルの〕付加価値は、誰にも負けない合成能力にある。消費者の需要を中心に合成するのが、成功の秘訣だ」(S・クリス・ゴパラクリシュナン)

□「CIOという言葉は残るだろうが、そのIは情報(インフォメーション)ではなく統合(インテグレーション)を意味する略語になる。ITはビジネスのあらゆる領域に浸透しているはずだから、もはやテクノロジーの分野ではなくビジネスプロセス統合の分野に移行する」

□異種のものをまとめる優秀な合成役が増えると、管理者、ライター、教師、プロデューサー、エディターが必要になる

□複雑なものを見て、わかりやすく説明する

□座って自分の仕事をするよりも、人に何かを説明するほうがはるかに重要なのだ、とマーシアは「説明」した

□複雑なことをうまく説明できたら、ビジネスチャンスは確実に広がる

□コンピュータが精一杯やれることと、人間が精一杯やれることを組み合わせる

□IT産業には特化した社員よりも、適応能力が高い多芸多才な社員を求める傾向が強くなっている

□なんでも屋(バーサタイリスト)

□「未来はつねに新しいことが待ち受けているから、たえず勉強するしかないというのが結論だった。そのとき、自分は<マーシア個人商店>だということを悟った。〔学びつづける〕責任は自分一人が負っている。資源は手に入る。あとは自分がそっせんしてやるかどうかだと。でもその前に信用を打ち立てる必要があると思った」

□「グローバルのローカル化」…「グローバルな能力を身につけることを学んで、現地のコミュニティのニーズに適合させる中小企業向けのビジネスは今後、膨大に増えるだろう……これがグローバルのローカル化で、われわれはまだその入口にいるにすぎない。今後、大量の仕事を創出する可能性を秘めている」(ジョエル・コーリー)

□「いい質問をすることで、私は科学者になった」(イシドル・I・ラビ)

□理想の才能(ライト・スタッフ)とは何か?

□フラットな世界でのばすことができる最初の、そして最も重要な能力は「学ぶ方法を学ぶ」という能力だ

□フラットな世界では、IQ(知能指数)も重要だが、CQ(好奇心指数)とPQ(熱意指数)がもっと大きな意味を持つ

□教師を雇う目安はしごく単純だと語った。「子供が好きかどうかです」(ヒラリー・ルーニー)

□人を好きにならなければならない…仕事の世界では、人あしらいが上手なのは大事な資質だが、フラットな世界ではなおさらそれが需要になる

□データが氾濫し、選択肢が山ほどある世界では、芸術的手腕、感情移入、大局的なものの見方、学識を超えたものの追求といった、右脳の特性に近い、精神的なものが最も重要な能力になる

□「コンピュータやロボットがもっと速くやることができない仕事や、優秀な外国人が安い賃金でやることができないような仕事」を身につけることだ(ダニエル・ピンク)

□「たとえば、取引をするよりも人間関係を強め、ありきたりの問題を解決するよりは、新規な難問に取り組み、たった一つのことを分析するのではなく全体像をまとめあげる」(ダニエル・ピンク)

□「外国人が左脳の仕事を安くできるというなら、われわれアメリカ人は右脳の仕事をもっとたくみにやろう」(ダニエル・ピンク)

□右脳のスキルをどうやって磨けばよいのか? 右脳を育てるには自分が好きなことをやるといい‐せめてやりたいことを

□「いま最も重要な能力のたぐいは、たまたまその人間が初めからやりたいと思っている事柄である場合が多い」(ダニエル・ピンク)

□「信念の堅さを示さないといけない‐そうなると心から信じなければだめだ」(ナンダン・ニレカニ)

□「信頼がなかったらリスクを負うことができない、リスクを負えないと、イノベーションはない…イノベーションを行うのに必要なリスクを負う人間を増やそうと思ったら、その場にもっと信頼を持ち込めばいい」(ドブ・シードマン)信頼の低い社会では、持続的なイノベーションは生まれない

□接続し、共同作業を行う相手によって、付加価値がどんどん生まれ、複雑な問題が次々と解決されるフラットな世界では、高度な信頼のある社会がいっそう有利になる。「共同作業の世界では、信頼があり余るほどなければならない」シードマンはなおもいう。「なぜなら、お互いか、もしくは指導者を信頼する人間が増えれば増えるほど、一緒に働こうとするようになるから」

□フラット化時代の富は、次の基本的な三つの事柄を手に入れる国に転がり込む傾向が強くなっている。一つ目は、フラットな世界のプラットホームにできるだけ効果的に、そして迅速に接続できるインフラ。二つ目は、国民がそのプラットホームでイノベーションを行って付加価値の高い労働ができるような理想の教育プログラムと知識スキル。そして最後の三つ目は、適切なガバナンス-具体的にいえば、適切な税制、投資・商取引に関する適切な法律、研究に対する適切な支援、知的財産権にまつわる法律の整備、そして何よりも国民にいい意味の刺激をあたえるリーダーシップ-によって、フラットな世界の流れを勢いづけ、なおかつ管理すること

□自国がフラットであるほど‐つまり天然資源が少ないほど、その国の人はフラットな世界で成功するという

□フラットな世界における理想の国は天然資源をまったく持なのだ。なぜなら、そうした国はたいがい内面を掘り起こそうとする。エネルギー資源ではなく、国民‐男も女も‐のエネルギー、企業家精神、想像力、知能を掘り起こそうとする

□「掛け算ができなくてソフトウエアが作れるなどという人間にあったことはない…秩序立てて物事を理解していないと、それより進んだ物事を作ることはできない」(ビル・ゲイツ)

□「アメリカの経済の未来を確実なものにする」

□「女房がよく言うんだが…歴史を勉強すると、あらゆる文明は勃興しては滅びる。残る記念物はたった一つ‐首都のどまんなかの大きな競技場だ」(クレイグ・バレット)

□「危機は逃すことこそ恐ろしい」(ポール・ローマー)

□「企業の変革は危機感と切迫感から始まる」(ルー・ガースナー)

□「状況がひどくなり、生き残るためにはこれまでと違ったことをやらなければならないと思い知るまで、組織というものは根本的に変わろうとはしない」(ルー・ガースナー)

□「雇用される能力(エンプロイアビリティ)…IBMが雇用を保証するのではなく、社員自身が“自分には雇用されるだけの能力がある”ことを証明しなければならなくなった」(ルー・ガースナー)

□終身雇用はフラットな世界にとってもはや維持することができない脂肪組織だ

□労働者に一番必要な筋肉は、職場などを変わっても持ち運び(移動継続)できる社会保障制度と、生涯学習の機会だ

□すべての労働者は賃金の対象となる「一般スキルと特定スキル」を有している

□敗者や遅れている者の面倒をみてやらなければいけない。フラット主義者になる方法はただ一つ、思いやりのあるフラット主義者になることだ

□汚い言葉をしゃべっていたら、医者にはなれない

□「まともな戦いをしよう…競技場を均そう…酔っ払いにそれはできないし、無学な者にもできない」(ジャクソン)

□「われわれは今も自転車競走の銭湯を走っていて、あとをついてくる選手の空気抵抗を減らしてやっている」(サミュエルソン)

□インドと中国にしてみれば、未来ははっきり見えている。未来に何をしなければならないかを、明確に知っている。「アメリカがいまやっていることをやる…アメリカの任務は、未来を創ることだ」(ジェリー・ラオ)

□いまの生活水準の向上を続けるには、未来を創りつづける人間を生み出すような社会を築くほかに手はない。…知識はぐんぐん進歩しているから、未来を創るのはいよいよもって難しくなる…教育、インフラ、成功願望、リーダーシップ、子育てといったすべてを理想に近づけなければならない

□「黒い猫でも白い猫でも、ネズミをとる猫はいい猫だ」(鄧小平)

□混乱から簡潔を見つける
不調和から調和を見つける
困難のさなかに好機がある(アインシュタイン)

□「頭を使う人間を多く雇い、テクノロジーが必要なことはアウトソーシングしている」(ケン・グリーア)

□「文句なしの一番に、最も独創的な考え方ができる人間にならないといけない」(ケン・グリーア)

□インターネットをはじめとするフラットな世界の全ツールが、すべての消費者に値段、エクスペリエンス(従来はなかった新奇な体験や訴求力の強いプロセス)、サービスを望みどおりにカスタマイズする手段をもたらした結果、「自分で決める消費者」が目の前で誕生している

□じつは企業はデジタル・ビュッフェをつくっただけで、消費者はそこで自分にサービスしているに過ぎない

□「われわれはいま、非常に高度な専門技術の交流がからむ、次の階層のイノベーションを目の当たりにしている…価値ある新しい飛躍的進歩をもたらすには、ますます細分化するそういう専門分野を、もっと結びつけないといけない。そのためには共同作業がきわめて重要になる」(ジョエル・コーリー)

□「現在の事業で中核となる競争力は、協力関係だ」(サー・ジョン・ローズ)

□<世界の医療水準向上を目指すグランドチャレンジ>…「このプロジェクトの狙いは二つ…一つは、科学的思考に倫理を加味するように訴えることだ…二つ目は、財団の資源で実際に何ができるかを試すことだ」(リック・クラウスナー)

□「村人たちが共有テレビで石鹸やシャンプーのCFを見るとき、目に留まるのは、石鹸やシャンプーではなく、それを使っている人々の暮らし、つまり乗っているバイクや着ている服や住んでいる家です」(ナヤン・チャンダ)

□テロリズムは金銭的欠乏から生まれるのではない…テロリズムは自尊心の欠乏からうまれる

□環境を破壊しない資源の利用の継続を考えるうえで重要なのは、地球に住んでいる人間の数ではなく、その生活様式が環境に与える影響である(「文明崩壊」ジャレド・ダイアモンド)

□「頭のいい修繕の鉄則は、破片をすべてとっておくことだ」(アルド・レオポルド)

□「ローカルのグローバル化」

□「アジアでのグローバリゼーションは英語化が進むかと思いきや、まったく逆です。国外移住者の市場とは、移住者の国の言語の国際新聞、国際テレビ・ラジオ局なのです。これをローカルのグローバリゼーションと呼ぶことにしています。グローバルがやってきてわれわれを包み込むのではなく、ローカルのほうがグローバルに広がります」(インドラジト・バネルジー)

□ローカルな文化、芸術形式、様式、料理、文学、映像、主張のグローバル化が促進され、ローカルなコンテンツがグローバル化する

□ごくわずかな量のダイナマイトで、はるかに多くの不安を伝えることができる

□「ビン・ラディンは顔を見せることはできないが、インターネットのおかげで世界中のどの家にも入り込める」(マイケル・マンデルバーム)

□ビンラディンは、地域を支配することはできないが、多くの人々の想像力をつかむことができる

□「イマジネーションは知識よりも大事である」(アインシュタイン)

□「インターネットなら、犬だっていうのがばれないよ」(ピーター・スタイナー)

□人間のイマジネーションが大切ではなかった時代など、これまで一度もなかった…いまほどイマジネーションが大切である時代も一度もなかった…フラットな世界では、共同作業のさまざまなツールが、誰にでも手に入る日用品(コモデティ)になっているからだ…けっしてコモデティ化されないものが、たった一つある。イマジネーション‐どういうコンテンツをつくろうかと創造することだ

□事件を頭の中で再生するのがイマジネーションであってはならない。新しい脚本を書くことがイマジネーションでなければならない

□「過去の業績がよかったことばかり話すようだと、その企業は苦境に陥っているとわかる。国でも同じだ、自分のアイデンティティを大切にするのはいい。14世紀には世界を制していたというのは結構なことだ。しかし、それは昔のことで大切なのは現在だ。思い出が夢をしのぐようでは、終わりは近い。ほんとうに栄えている組織の特質は、それを栄えさせたものを捨てて、新たに始める意欲があることだ」(マイケル・ハマー)

□夢よりも思い出の多い社会では…人々が日々過去ばかりに目を向けている。尊厳や自己肯定や自尊心を現在から探すのではなく、過去にこだわって得ようとする。それもたいがい真実の過去ではなく、想像と憧れから派生した過去である場合が多い

□「何が変わったかではなく、何が変わらなかったかを認識することが、われわれに答えを与えてくれる。なぜなら、これを認識して初めて、本当に重要な問題に集中できるからだ」(デビット・ラスコフ)

□これまでずっと大切に思ってきたもの-恐怖ではなく希望を輸出するアメリカ-を奪われたと、人々は感じているのだ

□「正体を明かしたくないのであれば、意見を言うべきではない」(メグ・ホイットマン)

□「ルールは最小限にして、きちんと守らせる。人々が自分の可能性を実現できる環境を創る。品物を打ったり買ったりするよりも大事なものが、そこにあります」(メグ・ホイットマン)

□大人になる道しるべがあるときには、その道しるべをたどって夢を実現しようと努力するようになる。道しるべがないと、怒りばかりに目が向き、思い出をはぐくむようになる

□「もっといい方法がありますよといわれても、人間は変わらない。ほかに方法がないという結論に行き着いたときに初めて変わる」(マイケル・マンデルバーム)

□「人間は人に教えられるのではなく、自分の目で確かめた結果として変わる」(マイケル・マンデルバーム)

□「一つの好事例は1000の理論に匹敵する」(スタンレー・フィッシャー)

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通信技術が進化(インターネット、光ファイバー通信網、パソコン、携帯電話)した

標準化ソフトウエアが普及(マイクロソフトワード、エクセル、パワーポイント)した

地球上のあらゆる人間(アメリカがインド)との共同作業が可能になった

海外へのアウトソーシングが始まった=先進国から後進国へ仕事が流出し始めた
��アメリカのコールセンター業務や会計業務がインドへ、
 マイクロソフトの次世代OS基幹部分設計が中国へ)

アウトソーシングは、製造業での単純労働に限らず、税務処理、医療サービス、
ソフトウェア開発、さらにはジャーナリズムといった知識労働にまで、及ぶ

仕事が低コストの後進国(中国やインド)へ移りつつある現在、先進国の課題は
アウトソーシングされない「新ミドルクラス」を創出すること
新ミドルクラスの仕事ができるよう、国民の能力を強化すること

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鍵となるのは教育である
短期には今あるツールの習得と活用、長期には科学教育の充実や人材の育成である

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「みんなの意見」は案外正しい

「みんなの意見」は案外正しい
ジェームズ・スロウイッキー(2004~2006)

□経済学者のハーバート・サイモンの言葉を借りれば、私たちは有限の可能性しか持ち得ない存在である…あらゆる可能性から最適な選択をしようと粘るより、そこそこよさそうなもので手を打つことのほうが多い…
制約がどんなに多くても、一つひとつの不完全な判断が正しい方向に積み重ねられると、集団として優れた知力が発揮されることも多い。

□集団の知恵(集合知)

□「認知」…どこかの時点で必ず明快な答えが存在するタイプの問題…販売数、許認可、最適地…正しい答えが一つ以上考えられても、優劣の判断がつきやすい

□「調整」…集団のメンバー全員が同じような行動をとる中、ほかの人と調整する方法を考え出さなければならない…問題…売り手と買い手、事業のオペレーション、渋滞中の運転

□「強調」…利己的で、不信感いっぱいの赤の他人同士が一丸となって何かに取り組むようにするという…課題…税金負担、公害対策、報酬

□集団が賢くあるために必要な条件…多様性、独立性、分散性

□スコーピオン号

□情報のかけら

□グループダイナミクス=複数の個人が集まって集団として作業を行うときに生まれる力学の法則

□理論的にいえば株式市場は、企業が将来獲得するすべてのフリーキャッシュフローの現在価値を計算するメカニズムであるとされている(フリーキャッシュフローとは、企業が経費や税金を支払い、減価償却や投資をした後に残る金)

□意見の多様性…突拍子もない解釈だとしても…独自の私的情報を持っている

□独立性…他者に左右されない

□分散性…身近な情報に特化する

□集約性…個々人の判断を集計して一つの判断に集約するメカニズムの存在

□個人の回答には情報と間違いという二つの要素がある

□たいていの場合、平均的とは凡庸であることを意味する。だが、意思決定の際には優秀であることにつながる

□まず考えられる限りの選択肢を列挙し、次にそこから選択する…二段階のプロセス

□成功の鍵を握るのは、絶対成功しそうにもないような大胆なアイデアを後押しし、積極的に投資するシステムが存在するか否か

□基本コンセプトを少しずつ変えただけのアイデアよりも、発想が根本から違う多様なアイデアが…必要だ

□システムの成功…どれが敗者かはっきりさせて速やかに淘汰する能力

□多様性…多様であることで新たな視点が加わり、集団の意思決定が持つネガティブな側面をなくしたり、弱めたりできる

□才能を求める戦争(war for talent)

□専門知識は「驚くべきほど狭隘」(W・G・チェイス)

□「専門知識がもたらす決定的な優位性を示す研究は存在しない。専門性と正確性に相関は見られない」(J・スコット・アームストロング)

□自信過剰の問題…医師、看護師、弁護士、エンジニア、企業家、投資家などは、全員自分が知っている以上のことを知っていると信じていた…彼らはただ間違っているだけではなくて、自分がどれだけ間違っているかすらまったくわかっていない

□過去の実績は、将来の結果の保証にはならない

□優れた意思決定に認知的多様性が不可欠な理由…個人の判断が正確でもなければ一貫性もない…集団が考えつくソリューションの選択肢を増やし、問題をまったく新しい視点から検証できるようになる…マイナスの側面としては…事実に基づいて判断しがち

□集団思考で重要な点は、異なる意見を封じ込めるのではなく、何らかの形で異なる意見が合理的に考えてありえないと思わせるところにある

□集団の論理に従うようプレッシャーがかけられると、人は意見を変えることがあるが、それはその人が考え方を根本的に改めたからではなく、集団に従ったほうが自分の意見を貫き通すより簡単だからである

□「私的情報」…具体的な情報だけでなく、解釈、分析、直感なども含まれる

□独立性は二つの意味で懸命な意思決定に不可欠だ…人々が犯した間違いが相互にかかわりを持たないようにできる…独立した個人はみんながすでに知っている古い情報と派違う新しい情報を手に入れている可能性が高い

□人間は自律的であると同時に社会的な存在である。人間はつねに学びたいと思っているが、学びは社会化のプロセスでもある。人々が社会的な存在だと気づいていながら、経済学者は人々の好みや意見に周りの人が与える影響を過少評価しがちで、個人の自立性ばかり強調する。
集団のメンバー…お互いの影響が強くなると、同じことを信じ、同じ間違いを犯しやすくなる。学びを通して個人が賢くなる一方で、集団としておろかになる可能性が生まれる

□社会的証明…たくさんの人が何かをしたり、信じたりするのはそれなりの根拠があるからだ、と思い込む人間の性向が生み出す現象

□状況が曖昧で不透明なときには、周りと同じことを自分もすればよいというのが支配的な考え方のようだ

□「世俗的な知恵が教えるところによれば、世間の評判を得るためには、慣行に従わないで成功するよりも慣行に従って失敗したほうがよいのである」(ジョン・メイナード・ケインズ)

□みんなの意見は案外正しいという厳然たる事実があるので、他人の行動に注意を払ったほうが、他人の行動に無関心であるよりも賢くなれるかもしれないと考えられる

□自分が持っている私的情報だけに基づいて判断を下すことは、不完全な情報に基づいて判断を下すのと同じだ

□情報カスケード…市場や投票制度のように、みんなが持っている私的情報を集約するのではなく、情報不足の状態で次から次へと判断が積み重なる状況

□インターネットは世界でもっともよく知られている、目に見える分散化されたシステムである

□集団の知恵という発想は、分散性が所与のものであり、本質的に全であると前提している。利己的で、独立した人々が同じ課題に対し分散したアプローチを採ると、トップダウン式のアプローチよりも集合的なソリューションが優れている確率が高い

□分散性は…暗黙知に不可欠だ(フリードリッヒ・ハイエク)

□暗黙知は、特定の場所、職種、経験に固有の知識なので、他の人に説明したり伝達したりするのは容易ではない…問題に近い場所にいる人ほど優れたソリューションを知っているはずだという考えが核心にある

□分散性は…独立性と専門性を奨励する一方で、人々が自らの活動を調整し…課題を解決する余地も与えてくれる…問題は、システムの一部が発見した貴重な情報が必ずしもシステム全体に伝わらない点

□「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」(エリック・レイモンド)

□セントラルプランナー…旧ソビエト連邦下の一元管理

□人々は…分散性は「自然」だとか、「自発的」な状態だという考えにとりつかれている…分散性の多くが、生物の世界に見られるせいかもしれない

□「シェリングポイント(暗黙の調整)」…シェリングは人々の予測が収斂する、ランドマークのような目立つ焦点が存在していると考えている

□行動を規制する規範や慣習をつくりだすことで、文化も調整をする

□いちばん浸透している規範は内面化されている

□自由市場は正しいところに正しい価格で資源を配分するという、もっとも難しいとされる調整の問題を解決する目的でつくられたメカニズムである

□協調の問題は…調整の問題に似ている…いい判断をくだすには周りの人の行動を考慮に入れなければならない

□調整の問題…は、メカニズムが正常に機能していれば、個人が私利私欲を一途に追い求めても問題を解決できる

□協調の問題…は、集団や社会のメンバーには私利私欲の追求以上のものが求められる…信頼がない状況下では近視眼的な私利私欲の追求だけが合理的な選択に思えてしまうので…こういう場合には、自分の周りの人を信じる姿勢が肝要になる

□相互応報原理…自分にとってまったくメリットはないのに、悪い行いには制裁を加えたい、よい行いには報いたいという気持ち…合理的であるかどうかは別として…向社会行動である…人々に狭い意味での自己利益を超えさせ…共通善のためになるような行動をとらせる

□「協力の基礎にあるのは信頼ではなく、関係の永続性である…長期的にはプレーヤがお互いに信頼しているかどうかは、安定した協力のパターンを構築できる条件が整っているかどうかという要素に比べれば重要ではない」(ロバート・アクセルロッド)

□協力の鍵を握るのは「将来の重み」(ロバート・アクセルロッド)である。やりとりが続くという約束が人々に慣行を守らせる

□協力関係が成功するためのベストなアプローチは、親切、慣用、報復からなる(ロバート・アクセルロッド)

□クエーカー教徒は清廉潔白で、ビジネスマンとしては厳格かつ綿密二記録を残すことでも知られていた

□企業の成功は信頼に基づく

□「信頼せよ、しかし検証もせよ」

□ロードプライシング(混雑料金)…通行料で渋滞を悪化させたツケを払ってもらう

□「自由流」…周りのクルマと安全な車間距離を保ちながら、好きなだけ早く走行できる

□巨人たちの肩の上に立つ…情報を少数の手に留めておくことなく、できるだけ多くの人に広めると社会全体の知識が増える…科学者はほかの科学者の業績に依存している

□科学的知識は累積的だ…科学的知識は集合的でもある

□知識は…ほかの資源と違って、消費されて枯渇してしまうような類のものではなく、価値を失うことなく広く行き渡らせることができる。むしろ知識は広まれば広まるほど、その価値が増す可能性は高くなる。知識の使い方の幅が広がるから(ヘンリー・オルデンバーグ)

□公に認められ、影響力を得られるようになるから、科学者は自分の知見をこぞって発表したがる…科学者は人々の関心で報酬を支払われている…「科学の世界では、個人の私的財産はその実質を他社に与えることで確立できる」(ロバート・K・マートン)

□科学的な証明は再現可能でなければならない

□「マタイ効果」…「おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」

□「集団極性化」…天邪鬼がいないところでは、話し合いが行われた結果、集団の判断が前よりもひどい内容になることもある

□なぜ極性化が起きるのか…「社会的比較」…集団内の自分の相対的な立場が維持できるように、人は自分と周りの人をいつも比較している…ある種の自己達成的な予言…真実だと思われることがやがて真実になる

□ザラは顧客をコントロールできないが、顧客の行動に自分の行動をあわせられる

□取引コスト…「まるごとアウトソーシングする」モデルの問題は…取引や契約の条件を決めて履行状況をモニターする時間や手間が膨大になってしまうことにある(ロナルド・コース)

□インハウスで何かを行うということは、ビジネスがもっと改善されるかも知れないほかの選択肢が使えなくなる

□二十世紀の…企業のあるべき姿…第一に、企業は垂直統合されていて、できるだけ自社で何でも賄う…第二に、企業はマネジメント層がいくつも重なった階層状の組織であって、それぞれ一つ下の階層を監督する責任を負っている…第三に、企業は中央集権化されている

□集合的な意思決定は合意形成といっしょくたに考えられることが多いが、集団の知恵を活用する上で合意は本来的には必要ない

□何か問題が起きた場合、できるだけ現場に近い人たちが意思決定を行うべきだ

□暗黙知(経験からしか生まれない知識)が市場の効率性に必要不可欠だ(フリードリッヒ・ハイエク)

□分散化のメリットは二つある。まず、責任が多く与えられれば人々の関与度も高くなる…第二は、調整のしやすさ…命令したり脅したりする代わりに、従業員自身がもっと効率的に業務を行う新しい方法を発見してくれる可能性が高い。監督の必要性や取引のコストを減らし、管理職はほかのことに関心を振り分けられる

□企業の大失敗を研究した結果、二つの…発見「一つは新しい事業に着手しようとするCEOをはじめとする経営陣が、自分たちの正しさを圧倒的に信じている傾向、も一つは現在の事業の状況とはまったく違う状況下で達成されたかこの業績に基づいて経営陣の才能を過大評価する傾向」(シドニー・フィンケルシュタイン)

□GMでの意思決定は「グループ・マネジメント」(アルフレッド・スローン)

□「賢明なCEOは必ず自分の周りにマネジメントチームをつくる」(ピーター・ドラッガー)

□「道徳問題…農民は人工的なルールに惑わされることがない」(トーマス・ジェファーソン)

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広告会社は変われるか

広告会社は変われるか―マスメディア依存体質からの脱却シナリオ
藤原治(2007)

□スペースブローカーの限界・・・中身はテナント任せであったから、肝心の売るノウハウが蓄積されていないという現実

□電通の商売のドメインは、単なるスペースではなく、「味付けられたスペース」であったが、スペースを売るというDNAは変わらなかった

□広告は販売促進の手法であって、企業目的である利益極大化をはかる手段である。その広告の定義は・・・「利益極大化を目指す販売促進の一手段で、企業が消費者に届けたい情報を、マスメディアを通じて流す方策」・・・その定義から、広告の構成要素・・・は、(1)広告の送り手/広告主、(2)広告の受け手/消費者、(3)広告媒体/マスメディア、(4)広告/物/クリエイティブ表現も含む、である

□「大衆の反逆」の中でオルティガ・イ・ガセットは、大衆を次のように定義している。「大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めようとはせず、自分は「すべての人」と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であることに喜びを見出しているすべての人のことである」

□広告を支えている大衆は、無知・貧乏・付和雷同、であるのが一番都合がいい。手に届かぬと思えた新商品を、「キミの買いたいモノはこれです」と告知し、「周りの人ももっているのだから君も買わなくちゃあ」と誘引する。しかもマスメディアを使って一方的に情報を流すだけでよいので効率的だ。そこに広告の妙味がある。

□Fragile(脆弱性)‐それが最近の個へのメッセージだ

□1993年にノースカロライナ大学のローターボーン教授は従来の4P理論を批判し、4C理論を打ち出した・・・
●Product(製品)からConsumer(顧客)へ・・・売れるか売れないかわからない見込み生産から消費者ニーズ・ウォンツを把握した生産へ
●Price(プライス)からCost(コスト)へ・・・生産コストだけではなく、消費者の購入コストや時間コストも勘案する
●Place(場所)からConvenience(便利さ)へ・・・販促の要点は売る場所の重視から、消費者の購買利便性に移る
●Promotion(販売促進)からCommunication(対話)へ・・・「売りつける」から「買いたい」へ

□これまで、媒体にボトルネックがあるという前提の下に、どの産業よりも消費者に近いと豪語していた広告代理店は正念場を迎える。媒体のボトルネックが解消したいま、媒体社との友好関係を武器に戦術展開することは時代遅れとなり、消費者を知り尽くせるかという課題が、広告会社のレゾンデートルとして新たに突きつけられるだろう。そして、これまで広告会社の独断場であった消費者情報をグーグルは、検索という手法の見返りとして獲得しようとしている。広告会社は・・・どうすればいいのだろうか。その解を握るキーワードはCRMである

□CRM(Cstomer Relationship Management)とは、顧客との関係を確立し、そこで得られる顧客の属性を企業経営に活用する手法である。この意味のCRM概念はそんなに新しいものではない・・・しかし本来のCRMはインターネットの申し子である・・・この意味で従来から行われているCRMに対して「eCRM」という概念が強調されることがある

□CRMの成否は次の二つの要因によって左右される。一つ目の要因は量である。まず顧客情報が量的に蓄積されていなければ、マネジメントに役立つだけの有意な情報は得られない・・・二つ目の要因は質。・・・その質につなげる作業が・・・情報の因果関係から新たな顧客の属性を見つけることができる・・・データマイニングである

□現場での・・・優秀な人材を確保するにはどうしたらいいのか。それはまず採用であろう。既存のビジネス・スキームに固執することから離れて自由な発想で環境の変化に対応できる新しい人材の維持である。これが最も重要である・・・次に重要なのが、既存のビジネス・スキームに浸かりながらも自由な発想で環境の変化に対応できる新しい人材の確保である。それは・・・教育である

□グーグルに勝てるか・・・グーグルは決してしないこととして「コンテンツを創り出すことと、それを保存すること」(iNTERNET magazine)としている・・・管理者は、eプラットフォームと消費者の間に介在するが、スペースを押さえるのではなく、そこを通過しなければならないような仕組みをつくれるかによって規定される。つまりR&D(研究開発)戦略の結果が管理者になれるか否かの分かれ道となる

□広告会社は製造会社ではない。しかも、受注型産業である。従って、通常の会社に比べれば、R&Dの位置づけが低いのもむべなるかなとも言える。しかし今後はこのスタンスでは生き残れまい・・・グーグルの研究開発費は以下の通り急速に伸びている
2003年・・・9123万ドル
2004年・・・2億2563万ドル
2005年・・・4億8398万ドル

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