自ら運転して休日出社した山田昇会長
本誌の直撃に雄弁に答えた〔PHOTO〕片野茂樹都心において、「ヤマダ電機の大規模店舗開業→既存の家電量販店と価格戦争」という図式は、消費者の間で恒例行事となった
LABI新宿東口館も、'67(昭和42)年以降、新宿を本拠地に展開してきたヨドバシカメラに対して突きつけた"果たし状"に他ならない
'09年10月に開業した東京・池袋の「LABI1 日本総本店 池袋」も、ビックカメラの牙城である池袋駅前にわざわざ出店した
おかげで、今や池袋は「日本最大の家電戦争の舞台」として名を馳せている数字を見る限り、ヤマダ電機の拡大戦略は当たり続けていると言えよう
いや、「ヤマダ電機の一人勝ち」と言って差し支えない
'10年3月期連結決算の売上高は前期比7.7%増の2兆161億円で、初めて2兆円を突破した
家電量販店業界で2位のエディオン(デオデオや石丸電気を展開)の、同じ3月期連結決算の売上高が約8200億円ヤマダ電機は後続に倍以上の差を付けた独走状態にある
ちなみに、非上場のヨドバシカメラは比較が難しいが'09年3月期の公表実績値で7012億円、ビックカメラは'09年9月〜'10年2月期(上期)で2984億円である'09年12月の第2週、歳末商戦の最中に、ある調査会社が、ヤマダの日本総本店に顧客がどこから来店しているかを調べたレポートを入手した
結果は次の通りだ【23区内・・・46%/東京都下・・・8%/埼玉県・・・23%/神奈川県・・・16%/千葉県・・・7%】
「つまり、日本総本店への来店客の半数近くは23区ではなく、他県から来た人たちなのです
JR埼京線や東武東上線が池袋駅に直結しているため、埼玉県からは23%も客が流入している
ヤマダの地域別の売上高を見ると、'08年3月期〜 '09年3月期の1年で、下げ幅の大きい地域として神奈川が約110億円、埼玉でも約10億円下げています」 (調査会社の関係者)ヤマダ電機は「郊外店舗は全国制覇した
残すはターミナル駅だ」と、ロードサイド型からレールサイド型(主要駅前に出店)に切り替えたが、結局、タコが己の足を喰うかの如く、これまで地方のヤマダ電機が摑んでいた自前の客を都心部で取り込んでいたというわけだチェーン店というのは、自社の中で競合があっても出店するのです
そのうえで、自社競合するデメリットを上回る規模の利益を得られる仕組みを作るチェーン店化することで規模の利益を求めているのはユニクロもニトリも同じでしょう
ただ、郊外、都市型店舗ともに言えますが、もはや国内に多くの市場が残されているわけではありませんヤマダ電機のガムシャラにも見える店舗展開は、外国人株主の多さから来るとの指摘もある
つまり、高い業績目標を掲げ、それを実現し続けなくては、株主が離れてしまうという事実だ確かにそうです
まだ会社が小さい頃、国内の投資家は相手にしてくれなかった
そんな過去があって、ずっとお付き合いさせていただいている投資家の期待に応えている、というのかな
その時(当時)は・・・力がなかったからね作家の村上龍氏が経済人を相手にトークを繰り広げる『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)は5月末に放送200回を迎えるが、それを機に行われた『毎日新聞』のインタビューで、村上氏は印象深い経営者として山田会長の名を挙げ、こう回想している
< 個人で電器店を経営していた時代を懐かしがる山田会長に「でも、あのころに戻りたいとは思わないでしょう?」と質問した
「懐かしいけど戻りたくはないという答えを期待したが『戻りたい』と言われて、びっくりした」と振り返る > (5月21日付夕刊)
崩れた"一人勝ち神話" ヤマダ電機の 「真実」 創業者・山田昇会長も認めた、 家電売り上げNo.1企業の 「知られざる憂鬱」 | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]