「浅草紅団」川端康成(1996/1930)
浅草には、人間の姿のみじめな醜さを売り物にする物貰いが、あんまり多いんです
私は男といると、自分をいつも計算しているのよ
女になりたい心と、女になるのがこわい心とを、秤の両方にかけて
私はね、ずうっと前から、あんたを知ってたのよ
なんだって思い出してあげるわ
あんたも割と間抜けね
悪いことをするには、覚えがいいってことも大切よ
姉さんの恋を見ていて、私は女になるものかと思った
ほんとうの女には悲劇がない
霞は朝薄く、夕に深し
霧は朝深く、夕に薄し
陽炎は消えて明るく
稲妻は消えて暗し
紅葉は峰より染め
花は麓より咲く
川音は昼静かに、夜騒がしく
海の音は昼騒がしく、夜静かなり
木の花は朝に開き
草の花は夕に開く
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