1.パーソナルな体験を語る
TEDでは多くのプレゼンターが、自分の個人的な体験を話していることに気づく
特に、失敗談から始まることが非常に多い
(人の成功自慢はあまり聞きたくないけど、失敗談なら聞いてみたいと思う心理でもあるのだろうか) 日常の些細な出来事から始めて「自分の信じるところ」を熱く語る姿には、心を動かされずにはいられないここでは、エリザベス・ギルバート 創造性をはぐくむにはを取り上げる
エリザベス・ギルバートはアメリカの人気作家で、彼女の自叙伝的エピソード「食べて、祈って、恋をして」はジュリアロバーツ主演の映画にもなった
このプレゼンでは、彼女が「挫折」を通じて知るに至った、「創造性」についての感動的なアイデアを見ることができる2.物語で始める/物語を語る
TEDでは、結論から始める論証や、箇条書きのような構成は非常に少なく、プレゼン全体がひとつの「物語」のようになっていることが多い
そして「物語」は、以下の3つの部分から成り立っている1. “常識”に捕われた日常/そもそもの”思い込み” (自己紹介や状況説明を含む)
2. “常識”や”思い込み”を覆された印象的な出来事、失敗談
3. それらを解決するに至った変化、解決策、現在/将来の取り組みここでは、あえてダニエル・ピンク の「やる気に関する驚きの科学」を紹介したい
プレゼンの冒頭で彼は、「今日は”物語”を語るのではありません
(一番好きなプレゼンのひとつ!) ダニエル・ピンクは、大前研一氏が翻訳して話題になったハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代の著者でもある
主張を立証します
」と宣言しているが、そのプレゼン全体が「法廷劇」のような体裁になっているのが面白い
(「それでは陪審員の皆さん!」なんて語りかけている
)また、「物語」の「舞台設定」を伝えるために、「ステレオタイプ」を上手く利用することもTEDスピーカーにとっては常套手段だ
「ステレオタイプ」とは通常悪い意味合いで使うことの方が多いが、限られた時間で多くの事を伝えるための手段としては有効だ
(そのためには、オーディエンスを正しく理解しなければいけない)ダニエル・ピンクも「ステレオタイプ」を最大限利用している
彼はワシントンDC出身のアメリカ人だが、このプレゼンが行われているのはイギリスのオックスフォードで、観客の多くはイギリス人だ
「ワシントンDCは人間より弁護士の方が多い」というジョークを聞いた事もあるが、「訴訟社会」や「哲学がない」と言われるアメリカのステレオタイプを上手く使って、観衆の笑いを誘っている※ステレオタイプについて
イラン系アメリカ人コメディアンマズ・ジョブラニ「イラン系アメリカ人の噂聞いてる?」を見ると、ステレオタイプについて考えさせられる
個人的には、ステレオタイプを一義的に悪いものとするのではなく、こうしてユーモアをもって語り合えるくらいが健全と思う3.テーマを一般化する
専門的な議論は、その領域でいくら意味のあることであっても、我々一般人には分からないことが多い
TEDのスピーカー達は、自分の専門を多くの人に意味があるように「翻訳」するのが非常に上手い
問題を抽象化し、関連性を見付けだし、分かりやすく解釈することで、多くの人が「自分のこと」としてその発見を享受することができるイタイ・タルガム 「偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ」が分かりやすい例だ
「オーケストラの指揮者」という非常に特殊な専門性を、「リーダーシップ」という誰もが直面する問題に一般化し、プレゼンしている
偉大な指揮者の貴重な(?)映像を折り込みながら、オーケストラやクラシックの素人でも分かりやすく楽しめる内容になっている4.シンプルなコンセプトに落とし込む
コンセプトが単語レベルまで落とし込まれていると尚良し
「神は細部に宿る」と言われても、どんなにディテールに気を使ったとしても、プレゼンの1時間後に覚えていることはそんなに多くはない
だからこそ、伝えたい事をシンプルに落とし込むことは重要だ
シンプルであればあるほど、時間が経っても驚く程その内容を覚えているものだ
単語を2〜3覚えるだけで、その重要なことを思い出す事ができる
(プレゼンのタイトルになることも多い
)チママンダ・アディーチェ: シングルストーリーの危険性 を見ると、シンプルにすることの重要性が良くわかる
このプレゼンで彼女が言いたかった事はー「シングルストーリーは危険である」それだけだ
プレゼン中に何度も語られる「シングルストーリー」というキーワード
この2つの単語の組み合わせが、彼女の活動や人生を象徴するようにプレゼンテーションが構成されている
いつでも思い出せる
詳しくは、是非下記の動画にて
チママンダ・アディーチェ: シングルストーリーの危険性
また、プロジェクトそのものが「シンプルなアイデア」であることも多い
※シンプルに落とし込む方法は、言葉であるとは限らない
サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか では、彼のアイデアが非常にシンプルな「一枚の絵」に落とし込まれている
彼はそれを「ゴールデンサークル」と呼んでいるけど、名前はともかく、プレゼンを見終わった後その絵を忘れる事は難しい
(ソフトウェアではなく)ハードウェアをオープンソース化する試み「オープンソースハードウェア」や、100年後も重要なニュースを集める「ロング・ニュースプロジェクト」はどちらも死ぬほどシンプルで(かっこいい)プロジェクトだ
5.倫理的な主張をする
道徳、善悪の判断に触れる倫理的なメッセージは難しい
倫理観は多様であるから、誰かの共感が得られても、誰かの反感を買う可能性がある
しかし/だからこそ、倫理的なメッセージは強力だ
人を動かす最も強力なメッセージは、利益に訴えるものではなく倫理的なものだと思う2020年までに全ての国を石油非依存にするために、電気自動車を普及させるアイデアを披露するシャイ・アガシは、「倫理的な決断をせよ」と問う
(本来、環境問題は科学的なものだし、経済的な問題だ) しかし、彼の倫理に問いかける主張は、その問題に悩む人にとっては、強く背中を押してくれるものとして響くだろう—
そういえば、今週末に TEDxTokyo が開催されますね
私は残念ながら参加する事はできませんが、オンラインで視聴することもできるので、是非一流のプレゼンを楽しんでください※(追記) 予想以上に読んでいただけているようなので、悪ノリして続編を書きました
TEDを200本見て気づいたプレゼン5つの黄金律nshoji.com | nshoji.com