「13回鳴るのも含めて『時計台』なんです」真昼の怪/京大の時計台 @asahi

※写真をクリックすると拡大します 写真時計台の内部の点検をする杉谷鉄夫さん
「時計台は、人生のモニュメント」と話す=京都市左京区
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※写真をクリックすると拡大します 写真吉田神社
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京都大学の時計台にはこんなうわさがある

「正午に鐘が13回鳴ることがある」

京都市左京区の京大吉田キャンパス
正門を入るとすぐ正面に2階建てれんが造りの本館
その上に高さ約30メートルの時計塔が姿を現す
最上部の東西南北の4面に白い文字盤が設けられ、針が時を刻み続けている

この時計台は1925(大正14)年につくられた
当時としては極めて珍しい電気式で、構内にあった天文台が星の動きをもとに時刻を計り、信号を送ってきていた
誤差は年1秒以内
日本一の精度だったという

うわさの鐘(高さ35センチ、直径25センチ)は北側の文字盤の下にあった
午前8時、正午、午後6時と、1日に3回、その時刻の数だけ鋼鉄の音を響かせる

「総長が時計のねじを巻いている」
京大の歴史に詳しい西山伸・京大大学文書館准教授は、京大生だった約30年前に、そんなうわさを聞いたことがある
電気式時計なので誰もねじを巻く必要はないが、あの「13回鳴る」という話もうそなのか

真偽を確かめようと、時計の「主治医」による月1回の点検に同行した
教職員もあまり知らない秘密のドアを開け、時計の心臓部がある小部屋に続く92段の狭い階段を上った

■元の姿にある不思議謎解きは修理のあとで

京都大学のシンボルの時計台
大正時代につくられた時計は1969年、大学紛争で学生たちに壊された
モーターなどを収めた小部屋には部品の残骸が散らばり、「全学共闘」などと書かれた文字が残っていたという

その翌年、修理を依頼されたメーカーの下請けとしてかかわり、メーカーが撤退した後も、この時計の「主治医」として点検・修理を請け負ってきたのが、京都市左京区の電器店「杉谷ムセン」の杉谷鉄夫さん(80)だ


「大手の業者ではなく、吹けば飛ぶような私に任せてくれた
権威主義的ではなく、自由な校風の京大だからだと思う」

その思いに応えようと、資料を集めて自分で設計図をひき、修理を続けた
92年3月、鐘はようやくその響きを取り戻した
今では、時計も元の状態の95%まで復元した
「この時計は、ぼくの人生のモニュメントになった」

今春には、夜になると時計の針と文字を照らす照明が、蛍光灯からLEDに替わった
最先端の省エネ技術だが、ほんのり赤みがかった光が完成当時の大正期の色合いを思わせる

スタンレー電気(東京都)がこの特殊なLEDをつくった
照明は赤い色合いにすると暗くなるが、独自の技術で明るさを犠牲にせずに懐かしい色調を再現してみせた

こうして、鐘の響きも照明の色調も約40年をかけて元に戻った
だが、「元の姿には不思議なこともあるんですよ」
点検中の杉谷さんが教えてくれた

それが鐘を鳴らす装置だ
「カム」という部品でモーターの回転を上下の動きに換え、ワイヤにつないだハンマーを上げ下げさせて鐘をたたく
普通ならハンマーは下がったところで止まるのに、この時計は上がった状態で止まるように設計されていた
カムが回りすぎると、ハンマーがもう一度落ちて鐘を鳴らしてしまう
1年に1回あるかないかだが、実際に正午に13回鳴ることがあるという

「直すことはできる」
杉谷さんはそう言うが、京大施設部管理課の田原一幸さんは反対だ
「鐘の駆動部は当初から残っている唯一の部分
それを直したら元の時計ではなくなってしまう
13回鳴るのも含めて『時計台』なんです」

(余韻)鐘が多めに鳴るのを耳にしたら幸運になれるかもしれません
(鍛)

(文・鍛治信太郎写真・小林裕幸)


(アクセス)

◆京都大学百周年時計台記念館京阪神宮丸太町駅から徒歩15分
吉田キャンパス正門を入った正面
100周年の資料や構内の模型を飾った歴史展示室、フレンチレストラン「ラトゥール」、京大グッズを販売する生協などを利用できる
年末年始を除く毎日午前9時~午後9時半開館(施設により利用時間、定休日は異なる)
電話075・753・2285

(スポット)

◆吉田山京大に隣接する散策コース
大節分祭で有名な吉田神社、菓子の祖「菓祖神社」、料理の祖「山蔭神社」、竹中稲荷神社などがある
大正時代の茶会設備を利用した山頂の喫茶「茂庵(も・あん)」は「登録有形文化財」に指定されている

(グルメ)

◆進々堂京大北門前今出川通百万遍の80年の歴史がある喫茶店
木製の大机が並び、自家製カレーが人気
営業は午前8時~午後6時
火曜定休
電話075・701・4121

asahi.com(朝日新聞社):1回、2回…真昼の怪 京大の時計台(京都市) - 関西

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