単純震源遡及法による断層破壊解析

2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震

English Version (英語)

単純震源遡及法を用いて2011年3月11日(14時46分)の東北地方太平洋沖地震の断層破壊を解析しました。アメリカのUSArray Transportable Arrayによって記録されたP波形を使っています。解析の結果、大きなずれが震央よりも陸に近い部分でおこり、三つのセグメントがほぼ同時にすべったことが分かります。全体の断層運動の規模は長さ約390km、幅約240kmになります。
2011年3月9日に発生したマグニチュード7.3の三陸沖地震によって動いた断層は東北地方太平洋沖地震の運動分布とは重複せず、3月9日の地震は東北地方太平洋沖地震の前震ではないことが分かります。東北地方太平洋沖地震の震央が三陸沖地震の断層のすぐ隣であることから、三陸沖地震が東北地方太平洋沖地震を誘発した可能性が考えられます。
同じように、2011年3月11日(15時15分)に発生したマグニチュード7.4の茨城県沖地震は東北地方太平洋沖地震の余震ではなく誘発地震とみられます。

断層破壊の進行

USArray Transportable Array網を利用して画像化された断層破壊の進行動画(右)。プロット量は高周波域のエネルギー放出量に比例します。暖色は大きいエネルギーの放出を示し、寒色は少ないエネルギー放出を示しています。白い星は震央を、赤い線は海溝を表します。地震の破壊開始からの時間表示は動画の左上。
左の地図は東北地方太平洋沖地震の震央(気象庁)を赤い星で、3月11日から3月12日にかけて発生した地震の震央(アメリカ地質調査所)を赤い丸で示しています。

断層破壊進行の高画質アニメーション(GIF約18MBまたはQuickTime Movie約43MB)を必要とされる方はは石井水晶またはEric Kiserまでご連絡ください。


全地震破壊域

震源域の長さ: 約390km
震源域の幅: 約240km
震源域面積:約49,550km2
面積に基づいたマグニチュード:8.7

赤色で表示された地域は東北地方太平洋沖地震の破壊域を表し暗色ほどエネルギー放出が多いことを示します。 大きな白色の星印は本震の震央を、また小さい二つの星印は3月9日の三陸沖地震(本震より北東)と3月11日(15時15分)の茨城県沖地震(本震より南西)の震央を表し、緑と赤の輪郭はこの二つの地震の破壊面積を表しています。三陸沖地震、東北地方太平洋沖地震、そして茨城県沖地震の震源域は重複せず、これらの地震が前震、本震、余震の関係ではなく、一つ一つが誘発された地震である事を示唆しています。


震源過程

破壊開始からのエネルギー放出を時間をおって計算すると、エネルギー放出は均一ではなく、50秒、80秒、95秒、120秒にピークがあることが分かります。断層の破壊は約150秒に渡って起きたと推定されます。


地震波形記録

東北地方太平洋沖地震の震源メカニズムと解析に使われたUSArray Transportable Array地震計の分布(オレンジの三角形)。計368の地震波形記録が使われました。


単純震源遡及法で解析されたその他の地震

2004年12月26日 マグニチュード9.3 スマトラ地震
2010年2月27日 マグニチュード8.8 チリ地震

参考文献

Ishii, M., Shearer, P.M., Houston, H., & Vidale, J.E., 2005.
Rupture extent, duration, and speed of the 2004 Sumatra-Andaman earthquake imaged by the Hi-Net array.
Nature, doi10.1038/nature03675.


謝辞

USArray Transportable ArrayデータはIncorporated Research Institutions for Seismology Data Management Centreからインターネット経由で入手しました。

ハーバード大学地震学のページ(英語)


ご意見などは石井水晶またはEric Kiserまでご連絡下さい。
Department of Earth & Planetary Sciences
Harvard University
20 Oxford Street, Cambridge, MA 02138 U.S.A.

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