「石橋なら渡るな、崩れそうな木の橋を急いで渡れ」ものづくり日本は日本の外では通用しない @livedoornews

昨年12月にUAEのアブダビで原子力発電所建設の受注があったことはご存知ですか?
日本勢は圧倒的な技術力で受注できると信じていたのですが、あとから入ってきた韓国に持っていかれてしまった
経産省にはこれがショックでした
…韓国は原子炉なんてつくったこともないんですよ?…日本人は世界に誇る技術をたくさん持っていると思っていますよね…
しかし技術が競争優位に繋がっていないし、利益にも繋がっていないんです

…環境・エネルギー分野に傾注していくということは…「システムとしてやっていこう」ということ
私たちはこれを「スマートコミュニティ」という言葉で表現しています
今まで政府は受注ひとつにしても民間に任せっぱなしでした
それぞれの企業が勝手ばらばらに海外で戦っていたんですね
しかし今後は政府が戦略的にトップセールスをやると言っているわけです
日本は技術には強くても国際標準化に弱い
独自の技術でやってしまうんです
それで負けたのが携帯電話ですね

三つ目の戦略は文化です
…麻生太郎・元総理が自民党で掲げていた“アニメの殿堂”(国立メディア芸術総合センター)は民主党が潰してしまったもの
…でも、あれはつくるべきなんですよ

四つ目の戦略は医療・介護・健康・子育てビジネス
…医療・介護・健康・子育てに関わる高度な技術を今から構築していこうという戦略です
もの凄い先端技術が採用されていく分野ですから
介護ロボットをはじめとした高齢者医療・介護に関するノウハウは、世界でも日本にしかありません
なぜなら日本が世界一の高齢化社会だからです
5~10年もすれば韓国・中国・インドなど海外でも高齢化が進んでいきますよね
そのときにノウハウを輸出しようという遠大な計画です

五つ目の戦略は…ロボットや宇宙ステーションといった科学技術ですね
ナノテクや炭素繊維も同じです
炭素繊維については日本が圧倒的に強い
これらの技術分野で、日本はこれまで各企業が単独で戦っていました
これからは、システムとしてさまざまな連合を組んで、これを政府が後押しをしていこうということです

■石橋は渡らない、金と度胸で勝負する韓国

「ものづくりとは何か」ということを考えていきましょう
2004年…当時、日本は「ものづくりの技術は韓国や中国にキャッチアップされているんじゃないか」という自信喪失に覆われていました
当時はパナソニックやシャープといった電機メーカー、特に携帯電話をつくっているところが韓国勢に滅茶苦茶にやられていましたから

「日本のものづくりがグローバリゼーションの環境変化に立ち遅れているのではないか」という話がありました

日本企業の経営者もグローバリゼーションとは言いますが、本当の意味はまったく分かっていない
私はあちこちで質問しました
「つい5~6年前は国際化と言っていたじゃないか。国際化とグローバリゼーションはどう違うんですか?」と
いちばん多かったのは「最近の流行語」という答えです
日本の経営者の考えはこの程度なんですよ

日本のものづくりはグローバリゼーションに適用していけるのでしょうか
たしかに現在の日本はガラパゴス現象に入っています
…ガラパゴスにいるゾウガメやイグアナはよその島に行くと死んでしまう
環境が変わると適応できなくなってしまうんです
…日本で皆さんが使っているテレビや冷蔵庫は、日本から一歩出るとほとんど使えないんですよ…グローバリゼーションに際しては、ものづくりの経営戦略と開発プロセスも当然変わってくるのですが、日本がこの変化にも気付いていませんでした

さらに…技術的イノベーションが競争優位の源泉に繋がっていなかった
…アブダビで原子炉をつくったこともない国に受注を持っていかれたことが大ショックだったんだと思います

日本の一人当たり名目GDPは、2000年は主要国のなかで3位でした
2007年は19位、2008年は23位まで落ちてきた
もう経済大国でもなんでもないんですよ
OECDでも下から3番目
標準的に使われているIMD国際競争力でも同様の結果が出ています
93年からずっと1位だった日本は、2000年以降にどんどん順位を下げて2007年には24位、今年2010年は28位まで落ちた
アジア勢でベストテンに入ったのは台湾のみで、8位です
中国は18位、韓国は23位、そして日本が28位
これほど日本は失われていて、世界で相手にされていないんです

そんな状況に陥っているにも関わらず、研究開発投資額は2007年に19兆円で世界3位
2位はEUだから単独国家としてはアメリカに次いで2位です
同年の研究者数も社会科学を含めると71万人でアメリカとEUに続く3位
研究者の数はすごく多いんですよね
同年の特許取得数は…もうダントツで1位ですね
23.1万件で、アメリカの倍以上です
このデータからも分かるように、日本は何かイノベーションや発明を起こすと特許をとってクローズしてしまうんです
過去はそれでも良かった
でも今はクローズしているとどんどん取り残されてしまう
これがグローバリゼーションにおけるひとつの特徴ではないかと思います

もう「特許だ特許だ」と言っている時代ではないんです
新しいものを出したら公開して、仲間を増やしていくことが重要なんです
政府があれこれ騒いで争わなくとも、仲間を増やすことで皆が日本のつくった規格を守ってくれればデファクトスタンダードになっていきます
…来年から地デジになりますよね
地デジにも規格がありますから、日本の総務省がグローバル化を目指して頑張っていた
ヨーロッパやアジアは相手にしてくれなかったのですが、南米はほとんど取ったんです
8カ国すべて、日本の規格で地デジを放送することになりました
そんなことをやっているうち、規格はとったけれども地デジが映るテレビはぜんぶサムスンに取られてしまった
サムスンとLGはずっと見ていたんですよ
日本の地デジが南米を制覇しそうだとみた瞬間、一気呵成に生産していったんです
南米ではサムスンやLGのテレビが標準になる
日本が後から行っても、もう勝てないということで、また実をとられてしまった
総務省、NHK、パナソニック、シャープ、東芝、NEC…、彼らが連合になっていけばすべて取れていたんですよ
勝手ばらばらにやって国も知らんと言っているわけですから韓国に負ける
グローバリゼーションの大きな流れのひとつなんです

日本の製造業では、営業利益を研究開発費で割った比率もどんどん下がってきています
…日本の企業は景気が悪くなると一斉にR&D費や設備投資を抑えますよね
経費節減というやつです
…そんなことはありません
韓国から見ると非常に大きな指標になってしまうんです
「日本が設備投資を抑制したら、こちらが設備投資の加速をしよう」という指標に
これは目先しか考えていないから
景気が悪くなったということは、後で振りかえってみると1年から1年半前に悪くなっているということなんです
悪くなったと分かったときには上向きになっているんですね
だからそのタイミングで大きな投資を行う
無謀な投資と先見の明は紙一重です
日本の経営者はどうしても慎重になってしまいますが、韓国の経営者は「無謀な投資と分かったときにやめればいい」と考えます
金と度胸でどんと勝負するんですよ
韓国、台湾、中国に負けているのは金と度胸で勝負したものなんです
負けているのはプロセス産業が多い
設備投資が鍵になりますから、半導体メモリなんてまさにそうなります
膨大な設備投資が必要なのに、日本はその判断ができない
液晶パネルや携帯電話も同様にことごとく負けてしまう
日本は金があっても度胸がないんです
グローバリゼーションでは度胸がないと勝てません
国としては「これからは金がなくても度胸がある中小企業は国が支援しよう」と、明確に掲げているわけではありませんが、そんな考えかたでやるようなことになっています
日本には「石橋を叩いて渡る」という諺がありますよね?
韓国は「石橋なら渡るな」という発想なんです
何故か分かりますか?
石橋なら最初に渡ってもすぐ誰かが追従してくるからです
「崩れそうな木の橋を急いで渡れ」ということなる
渡った瞬間に橋が崩れたら2番手以降はついて来ることができませんから
一部の例外を除き、グローバルでやろうとしたら1番しか目につかないからです

韓国は何でも一番を目指します
スポーツでもなんでも一番じゃないとだめなんです
日本は豊かになったからということもありますが、オリンピックで銅メダルでも凄く喜ぶ
…日本が通り抜けた明治時代の『坂の上の雲』を、彼らはちょうど目指して登っているんです
目標がありますから

元サムスン電子常務・吉川良三氏「日本がものづくりで韓国に負ける理由」(GLOBIS.JP) - livedoor ニュース

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