沖縄公共政策研究所(安里繁信理事長)は2月26日、「観光戦略をどう描くか。沖縄の強みと弱み」と題し、2016年新春特別セミナーを那覇市のタイムスホールで開いた。元ゴールドマン・サックス証券アナリストで、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏、リウボウホールディングス社長の糸数剛一氏、JTB沖縄社長の宮島潤一氏が登壇し、外国人観光客の獲得に向けた戦略や課題について意見を交わした。コーディネーターは同研究所の安里理事長が務めた。
沖縄観光戦略の長所や課題などの意見を交わすパネリストたち=2月26日、那覇市久茂地・タイムスホール
■沖縄の課題
安里繁信氏 沖縄は観光を基幹産業にうたっている。沖縄観光の課題は。
デービッド・アトキンソン氏 沖縄だけでなく、ほかの地域も同じだが、大量安売り戦略の傾向がある。富裕層向けの楽しみがない。スーパーはあるが、その上の専門店やブティックなどがない。また、秀逸な沖縄の伝統技術の商品を買いたい場合に、どこにあるか分からない。多様性がまだ整備されていない。
糸数剛一氏 アジア観光客をメーンターゲットに見た場合に間違いが多い。沖縄を知り尽くして、文化を求めている人もいるが、多くの人は一番近い日本として来る。「日本のあの商品が欲しい、食べたい」と来ているのに沖縄に少ない。沖縄には日本の良質な商品をもっと入れることと、人気がある沖縄の健康食品を軸にアジア客の満足度向上をかなり優先した方がいい。
宮島潤一氏 ショッピングを除くと、宿泊と食事とエンターテインメントの消費は旅行費の6割弱を占める。ロングステイ客や欧米からの呼び込みで沖縄に足りないものは、主要な航空会社が那覇空港に入っていないこと。欧米から入ってくる足がない。欧米人は最低2週間は滞在し、直接地域にお金が落ちる。欧米マーケットを狙うべきだ。
安里氏 香港の富裕層がポケットに100万円を入れて沖縄に来ても、欲しいものがなく1円も使わずに帰ると聞いた。彼らが欲しいのは1位が夕張メロン、2位がタラバガニ、3位が(イチゴの)あまおう、4位が神戸牛。日本のトップブランドを消費したい。
アトキンソン氏 以前、年収数十億円の海外の知人が、開発されていない離島に行きたいと宿泊施設を探したら、1泊2千円だった。そこには泊まれないので、費用を負担するから、砂漠などでも使える高級テントなどの手配を頼んだが断られた。簡単にできませんと言うと、機会が逃げていく。「日本に滞在したい、消費したい」という気持ちに、応えていないし、応えようとしていない。ほかの地域に行ってしまう。
■マーケティング
安里氏 これまでニーズはどう探ってきたか。
宮島氏 マーケティングという言葉がまだまだ定着していない。また、サービスという言葉も同様だ。昔、福沢諭吉が奉仕と訳したが、サービスは奉仕ではない。有料。いいサービスを提供して、お金をもうけるという感覚が日本人にはまだまだ欠けている。
糸数氏 外国客を分析すると国別で買い方に特徴がある。「無印良品」で買うのは中国大陸からの観光客、「フランフラン」は韓国人など。国ごとで違う。客層もひとくくりにできない。まず国別に、次にターゲット別に取り組まないと絶対に駄目。全体の付加価値を上げて、収益を上げていかないといけない。富裕層の取り込みも始めたばかり。マーケティングは一番重要だ。
安里氏 本政府のマーケティングの調査方法は、空港で帰国前の買い物客や、到着直後の目的地にすぐにでも行きたい人を引き留めて実施している。沖縄も同じ手法でやっている。
ハワイは日本の手法をばかにしている。ハワイは回答者の精神状況や調査環境を重視し、往復の飛行機の中でアンケートをとっており、冷静な回答をとることができる。適当に声を掛けることがマーケティングではなく、どの状況の中で確度の高い情報を参考にするかどうかで、統計の取り方が違うと学んだ。
アトキンソン氏 日本は聞きたい情報を聞き出そうとしている。外国人は観光でお邪魔しているという感覚が強く、外交的な発言で、お世辞を言うに決まっている。質問は「次の課題は何ですか。ヒントをください」とすべきだ。
今ある外国人からの評価も、外国人目線では侮辱的なことを言われているように見える。「ごみが落ちていない」「マンホールが面白い」などは、褒めるところが見つからず答えた、究極的にばかにしていると見ることもできる。日本はデータを取れてなく、読む力もない。
同時に、日本政府は日本に来ている人にしか調査していない。すでにファンの人に評価を聞いても素晴らしいと言うに決まっている。沖縄や日本で一番大事なのは、欧州など今観光客が訪れていない地域で「なぜ来ないのか」を徹底的に追求することだ。
■振興の具体策
宮島氏 USJは入場料が7千円かかり、早く乗れるファストパスはさらに7千円必要になる。これは格差かニーズか。バチカン市国の見学には4500円から1万2千円の段階がある。自分に見合ったところに対価を払ってサービスを受けるのは当たり前だが日本で差をつけることを格差と考える。
多様性を準備しないといけない。韓国の徳寿宮では1995年から衛兵交代を始めた。沖縄の首里城でも1日1回でいいから、当時のイベントを見せる仕組みをつくれば、滞在時間を延ばし、お金を落としてもらえる。堂々とお金が払えるものをつくり、提供することが大事だ。
アトキンソン氏 首里城は空っぽ。例えば海外から大事なお客さんが家に来るときに、家具を片付け家を空っぽにして、飲食禁止の接待をする人はいない。首里城も戴冠式などいろんな儀式が毎日のようにあったと思う。映像を流すだけでは、雇用にもならない。首里城は文化財ではあるが、文化じゃない。王様の住居で、儀式をする舞台に過ぎない。舞台でお金を取るのは成り立たない。冷凍保存状態で、何の楽しみもなく、観光とは言えない。
安里氏 国内市場は必ず衰退する。沖縄は香港、台湾、中国、韓国をコアターゲットにしている。今後の課題は。
糸数氏 課題はいくつもある。一つは国際通りなどの通りの魅力づくりだ。行政もある程度条例をつくり、制限し、通りごとに魅力的にしていく。まちづくりや通りのコンセプトを官民一緒に取り組まないといけないが、非常に弱い。沖縄は、多様性を持った魅力あるまちづくりができる。
宮島氏 今、県民1人が年間124万円を使う。観光で訪れる中国人は平均約15万円。日本人は約7万円を使う。沖縄も今後、人口が減ってくる時代に入る。交流人口やにぎわいの創出、お年寄りの生きがいづくりのために、観光客の呼び込みは欠かせない。
欧米人が来たくなるようなコンテンツの多様性がない。県内でギリギリ合格は、ガンガラーの谷と、大石林山のツアー。いろんな植物やチョウがいるが、紹介するツアーがない。来てくれるコンテンツをそろえていくことが先。そうすることで、長期滞在や消費につながる。
アトキンソン氏 文化は強みだが、あまりにも偏った魅力の発信はやめた方がいい。フランス人は文化好きでも、朝から晩まで文化財ということではない。多様性に欠けることもよくない。沖縄料理を食べたいと思うが、毎日毎日食べたいとは思わない。沖縄は自然や文化はそろっている。あとはやる気の問題だ。
沖縄は環境がものすごく恵まれていて、観光立県として一番進めやすい。台湾だけでなく、欧州も狙って、多様性に富んだ、モデルを国全体に示してほしい。経済もよくして、県民を増やしていく、観光の成功例を実現してほしい。
情報源:
「首里城は空っぽ」? 沖縄観光の課題とは | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
沖縄を拠点に県産品や全国の特産品を海外市場に展開する輸出商社を育成しようと、県商工労働部が「貿易公社」の設立を検討していることが分かった。日本の特産品や農水産物を、那覇空港を経由して世界各地に輸出する物流モデルを確立するため、販路開拓や貿易手続きに通じた商社機能が弱いとされる課題の克服を図る。県は商社機能の拡充に向けた今後10年間のロードマップ(工程表)を本年度中に策定する。

8月31日に那覇市内で開かれた沖縄国際ハブクラスター推進会議で、県の仲栄真均アジア経済戦略課長が事業計画を説明した。
商社機能の強化は、県アジア経済戦略構想で掲げた国際競争力のある物流拠点の形成という目標に加え、政府が策定した農林水産物の輸出力強化戦略で那覇空港の活用が盛り込まれていることを受け、全国の特産品の輸出拠点化を促進する狙いがある。
専門家らで構成するロードマップの検討委員会が29日に開かれ、短期(3年後)、中期(6年後)、長期(10年後)に分けて課題と対策を整理していくことを確認。輸出国の法令や制度の調査などを進め、商流ネットワークの構築に向けた商社機能の拡充策を検討する。
情報源:
沖縄県、貿易公社設立へ 全国特産品の輸出拠点 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
各島で集票、出馬出遅れ挽回
任期満了に伴う竹富町長選挙は29日午後2時から、石垣市商工会館ホールで開票が行われ、新人で前町議の西大舛髙旬氏(68)=西表南風見=が1418票を獲得し、初当選を果たした。3期目を目指した現職の川満栄長氏(63)=西表住吉=は1310票だった。当選後、西大舛氏は「日本一豊かで生き生きとしたふるさとづくりに取り組む」と決意を示した。今後は議会と連携した円滑な行政運営、役場移転の早期実現、均衡ある町の発展など、山積する課題にどう取り組むのか、その手腕が試される。
今選挙では川満氏が6月に出馬を表明し、先行。候補者擁立が難航した野党側は、告示10日前に西大舛氏が「進まない政治、行政ではどうにもならない」と現町政を批判し、出馬を決断。出遅れた西大舛陣営は町議11人(西大舛氏除く)のうち、西表選出の新博文と仲里俊一の2氏を含む町議6氏が西大舛氏を支持。自民系県議や市議、与那国町議らの支援、自治労竹職労の推薦を受け、各島で満遍なく得票。大票田の西表島でも現職への反発票などを取り込み、遅れを挽回した。
一方、川満陣営は住民投票の大原移転支持票で1459票からの上積みを目指し、2期8年の実績をアピールしたが、有権者の支持が得られなかった。
西大舛氏は「現職を変えてほしいという思いが強く、私が訴えてきた『先に進める政治』が受け入れられた」と振り返った。
川満氏は「公正公平に行政を運営していただき、均衡ある発展を図るべく、新しいリーダーには力を注いでもらいたい」と西大舛氏に要望した。
今回の選挙は、過去の町長選で大きな争点となっていた役場の移転問題が、昨年11月の住民投票で西表大原への移転が決まり、争点とならなかったことで有権者の関心が低調となり、投票率は過去最低の82.18%にとどまった。
タグ: 竹富町長選挙 , 西大舛髙旬
情報源:
【竹富町長選】西大舛氏が初当選 現職川満氏に108票差 | 八重山毎日新聞社
株式会社電通(本社:東京都港区、社長:石井 直)は、日本語教師養成講座ほか教育事業を運営するヒューマンアカデミー株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:新井 孝高)および東京外国語大学の荒川洋平教授との共同で、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」(http://www.yasashii-nihongo-tourism.jp)を本日付で発足させます。
「やさしい日本語」とは、日本語を学ぶ外国人に対して、語彙を制限して分かりやすく表現する技術のことで、外国人に日本語を教える「日本語教師」の基本スキルの一つです。これまでも国内に住む外国人を対象にした防災・減災対応や公文書書き換えの領域では研究・実践が行われてきましたが、今回の研究会ではこれを観光分野におけるコミュニケーションに転用し、自治体や観光・商業施設などに向けた、新しい訪日観光客対応の提言活動を行っていきます。
本研究会発足の背景には、政府が推進する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、福岡県柳川市が推進する「日本語ツーリズム」が交付金対象事業になったことがあります。
地方における観光客は日本語学習熱の高い台湾・香港・韓国からのリピーターが多く、旅行グループのうち1人は日本語を話せる人がいると期待できます。同市は特に熱心な日本語学習者の多い台湾に注目し、日本語を話す台湾人観光客に日本語でたくさん話してもらう「日本語ツーリズム」を推進していく方針を掲げています。研究会では産学連携でこの「柳川方式」を側面支援し、他の自治体にその動きを広げる活動を推進していきます。
研究会は「やさしい日本語部会」と「日本語ツーリズム部会」で構成されます。研究会全体の座長および「やさしい日本語部会」の座長には、著書『とりあえず日本語で』などを通して外国人への日本語での対応を提唱してきた東京外国語大学の荒川洋平教授を、また「日本語ツーリズム部会」の座長には、訪日観光客と現地の人が会話をする「ツーリスト・トーク」研究の第一人者である東海大学の加藤好崇教授を迎え、口頭での"日本語によるおもてなし"の意義と実践のあり方などを提言していきます。
これまでは「日本人が英語で話す」というのが通例でしたが、本研究会を通じ、地方の観光従事者や市民が「やさしい日本語」でおもてなしに参加できる機会の創造を目指します。また、観光分野における新たな雇用促進、生きがいの創出をはじめ、多方面でその重要性が高まっているボランティア対応についても、「やさしい日本語」という選択肢を入れることで、多数の日本人がおもてなしに参画できる社会づくりに貢献できればと考えています。
��ヒューマンアカデミーの会社概要>
・社 名:ヒューマンアカデミー株式会社
http://manabu.athuman.com/
・所 在 地:東京都新宿区西新宿7-5-25 西新宿木村屋ビル1F
・資 本 金:1,000万円
・設 立:2010年4月
・代 表 者:新井 孝高(代表取締役)
・事業概要:社会人教育の「ヒューマンアカデミー」、全日制教育の「総合学園ヒューマンアカデミー」、子ども向けの「ヒューマンアカデミーロボット教室」、国際教育の「ヒューマン国際大学機構」「MBAプログラム」「日本語学校」など、幅広い年代を対象とする教育事業を全国で展開。修了後は、グループ内の人材事業会社が就職、転職をバックアップ。
以 上
情報源:
電通、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」を発足 - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通
食の安全性が叫ばれるなか、作り手の顔が見える販売サイトは増えている。そこでは、作り手のストーリーを伝え、消費者の共感を獲得していった。ここへきて、その動きにある変化が見られる。キーワードは、共感から参加へ。変わるエシカル消費の最前線を追う。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
ポケットマルシェ(岩手県花巻市)は9月5日、生産者から食材を購入できるスマフォアプリをリリースした。そのアプリの名称は、会社と同名の「ポケットマルシェ」。
同アプリには、全国100以上の農家・漁師が登録している。生産者それぞれが自慢の食材を販売する。アプリ上で、生産者と会話することもできるので、スマフォを通して、マルシェに来たような気分が味わえる。無料でダウンロード可能だ。
農林水産省によると、新規就農者の3割は5年以内に離農する。その最たる要因は、不安定な収入だという。補助金が切れるタイミングとも重なる。そこで、同アプリでは、販路開拓を支援した。
直接販売で煩雑とされていた、出品から配送、顧客管理まで、アプリ上で処理できるようにした。配送では、ヤマト運輸と提携し、注文が入ると自動的に配送伝票をドライバーが生産者へ届ける仕組みになっている。
販売価格は生産者側で決められる。これまで生産者は農協や漁協に販売を委託していた。つまり、生産者に価格決定権がなかった。
ポケットマルシェにも出店している石巻のワカメ漁師の阿部勝太さんは、「モノが良いか悪いかで値段が正当に評価されるのではなく、市場や業者さんの事情で価格が決まっていた」と現状への不満を明かす。阿部さんは収益を上げるために、ほかの浜の漁師と組合をつくり、独自に販路を開拓した。漁協を通さないことで、批判も受けたが、協力費を納めることで、認めてもらった。
ポケットマルシェに出店している生産者は、手数料として売上高の15%を同社に支払うが、価格は自分たちで決められる。各地域によって、農協や漁協の縛りは異なる。本間氏は、「(出店者は)それぞれが交渉して、出店している」と話す。
ポケットマルシェの本間勇輝取締役は、このアプリの最大の特徴について、「ごちそうさまが伝えられること」と言う。これまで、生産者とコミュニケーションを取る機会は限られていた。このアプリを通して、感謝の気持ちが伝わるので、「生産者としての仕事に誇りを感じてもらえるはず」とする。この誇りが、担い手を育成する最大のカギと、本間氏は見る。
エシカル消費の本質とは
ポケットマルシェを立ち上げた高橋博之氏は、情報誌「食べる通信」の代表だ。食べる通信とは、生産者を特集した雑誌。購入者には、雑誌とともに、生産者が作った食材が届く。生産者のファンをつくることで、価格競争に参加せずに生き残っていけるようにした。2013年に東北食べる通信が生まれ、その後、全国に派生した。今では、31都道府県35地域に広がる。
共感から「参加」へ 変わるエシカル消費
食べ物付きの雑誌「食べる通信」は2014年度「グッドデザイン金賞」受賞
本間氏は、食べる通信の立ち上げから、高橋氏の右腕として活躍してきた。この取り組みで、一定層の消費者に変化が起きているという。「ただ消費するだけでなく、積極的に生産活動にも参加するようになった」(本間氏)。生産者にほれ込んだ一部の消費者は、生産地に足を運び、生産者の悩みを解決するといった動きが各地で起きているのだ。
例えば、こうだ。マーケティングスキルを生かして、販路拡大を支援。SNSを駆使して、新規購入者を獲得。スキルがない大学生も、稲刈りの手伝いなど肉体労働で支援する。
ある大学生は、こうした参加によって、お返しとして、たんまりと米をもらった。こうした参加型消費によって、貨幣経済ではあり得なかった価値の交換が起きている。
作り手に惚れた消費者が自発的に動くことで、結果として、後継者不足が課題の一次産業を救うことになる。本間氏はこの動きこそ、「社会問題の解決につながるエシカル消費の本質的な形」と考える。エシカル消費を消費の文脈だけで見てしまうと本質が見えないとする。
消費することだけでなく、先に紹介した、生産活動に参加することも、エシカル消費の一部。そう考えると、お金をかけなくても、誰でも参加することができる、楽しくてハードルが低い活動とも考えられる。
情報源:
共感から「参加」へ 変わるエシカル消費 (オルタナ) - Yahoo!ニュース